念は通ず
昨日は久しぶりに平安神宮で開催される薪能に行ってきました。
今年は「源氏物語」をテーマにした番組で、2日目は「須磨源氏」、「野宮」、そして新作狂言を挟んで「土蜘蛛」で締める、というもの。
あいにく昨日は朝からの雨模様で、てっきり今日は屋内(ロームシアター)での開催となるものと思い込んで出かけました。
ところが!直前の5時過ぎ、まだ雨が降っているけれど、一応念のためにネットで調べると、「平安神宮境内での開催」となっています。「え~、強気やな~」と言いつつ、会場へ。
装束や楽器のこともあり、当然雨の中での演能は不可能です。本当にするの?と見回すと、会場入り口には「雨天の場合は、中止、開始時間の延期などもあります」との注意書きがありました。会場に入ると、観客はみんな合羽を着たり傘をさしているものの、ほぼ満席状態。
冷たい雨に打たれつつ、座席で天気予報を調べると、ちょうど開園時間には雨がやむとのこと。これは信じるしかないな、でも中止になったら入場料はどうなるのかな、などと神聖かつ雅な場にそぐわぬ俗なことを考えておりますと、なんと開演5分前には本当に雨がやみ、陽の光が差してきたではありませんか。
結局無事開演し、薪にも火を入れて幽玄な雰囲気の中、能を楽しみました。
最後の演目「土蜘蛛」には洛星謡曲部出身の能楽師も出演しています。「土蜘蛛」が始まるころには、物の怪の登場を暗示するような空模様に。そして途中から、ぽつぽつ雨が落ち始め、終了するやいなや傘が必要なくらいに雨が降る、という、まさに、薪能の開演中だけは竜神が我慢して雨を降らすのを待ってくれたのでは、とも思えるくらいの奇跡的な時間でした。
火入れ式のあとに、能楽協会の井上氏が、「昨年は2日とも大雨で屋内開催を余儀なくされ、薪への火入れもできずに終わった。今年はなんとしても、両日とも平安神宮で行いたい、と雨雲レーダーとにらめっこして屋外での開催を決定した。観客の皆様には冷たい思いをさせてしまって申し訳ない」とスピーチなさいました。それを聞き、まさに、薪能に対する関係者の強い思いが雨雲をよけた、と感じました。念は通じる。これは能楽関係者の念、薪能企画実行メンバーの念はもちろん、「源氏物語」登場人物の念(王朝人の念)が通じたのではないか、とIT化が進む現代に強く感じたひと時でした。
追記:
この文を記しているとき、緊急地震速報の不気味な音が鳴り響きました。
能登でのまたもやの強い揺れに、どれだけ恐怖と不安を感じられていることでしょう。
能登地方の皆様に平安な日が一日も早く戻りますよう、心よりお祈りしています。
校長