秋深まる
後期が始まって10日経ちました。
衣笠の山の色も、日に日に黄色から赤色に移ろってきました。
秋です。食欲の秋。芸術の秋。読書の秋。
先日元同僚の方から、庭で採れた山の芋のむかごがたくさん届きました。
「むかご」を食べたことはもちろん、見たこともない人も多く、比叡山の麓で育った昭和の人間としては、少なからず驚きを覚えます。
さて、いただいた秋の味覚は早速、むかごごはんにしていただきました。
むかごごはんメインのお弁当です。
「むかご」(平安時代では「ぬかご)といえば、昔古文の授業で扱った『平家物語』六巻「祇園女御」の文章の中に、このようなものがありました。平清盛の出生について述べられている有名な箇所で、白河院から祇園女御を妻として賜った平忠盛が、女御が生んだ男の子が元気であることを御幸の折に院にそれとなく伝える場面です。
「その時忠盛、藪にいくらもありけるぬかごを、袖に盛り入れ、御前へ参り畏まつて、
いもが子は はふほどにこそ なりにけれ
と申されたりければ、院やがて御心得あつて、
ただ盛り取りて 養ひにせよ
とぞ付けさせましましける。」
山芋のつるが地面に這うようにのびる様と子の成長、そして、「いもがこ」、つまり「女御の子」と「山いもの子=むかご」をかけていて、なんと機知に富んだ文なのでしょうか。う~む。おもしろい!素晴らしい!
残念ながら、山芋やむかごを見たことのない現代っ子には、この文の面白さが十分伝わらないかもしれません。子どもの頃に、落ちた栗やくぬぎ、どんぐりを拾い、渋柿に顔をしかめ、むかごを採って、秋を楽しんでいた経験は宝物だったのですね。
頂いたむかごからいろいろ思いを馳せる秋の夕暮れです。
校舎の西側窓から
校長 小田